• HOME
  • ブログ
  • 街のコト
  • 「江戸切子」を継承し、クリエイティブな女性が輝く職場づくりを / 江戸切子の店華硝 取締役 熊倉千砂都さん

「江戸切子」を継承し、クリエイティブな女性が輝く職場づくりを / 江戸切子の店華硝 取締役 熊倉千砂都さん

2016年6月、江戸切子発祥の地である日本橋大伝馬町に、創業70年を超える老舗「江戸切子の店華硝」の日本橋店が開店しました。「華硝」といえば、2008年洞爺湖サミットで、当時オバマ大統領などへの国賓贈呈品にも選ばれるなど、日本を代表する硝子ブランドです。

日本橋店の開店後は、地域企業と連携した、手ぬぐい、扇子、折り紙などのコラボ商品を次々展開しています。現在は、「華硝×モラルテックス」で、江戸切子の紋様を特徴としたタオルを開発中。また、今年10月開催の地域のお祭「べったら市」では、「華硝×モラルテックス」のブースを展開します。

江戸切子はもちろんですが、そこを経営されている熊倉さんがキラキラと魅力的でクリエイティビティ溢れる方です。だからこそ、多くの地域企業とのコラボ企画が実現し、テレビや雑誌の取材が殺到しているのだと思います。私もお会いする度に、新たなインスピレーションを頂きます。

そこで、今回のインタビューでは、江戸切子の店華硝・取締役の熊倉千砂都さんから、事業継続が課題とされる伝統文化を次代に継承していく者として、取り組みを続ける原動力を伺いました。そこには、強くて優しい想いと覚悟がキラキラと輝いていました。

 

■「華硝」の作る江戸切子の魅力とは

―本日は、インタビューにご協力頂き、ありがとうございます。はじめに、あらためてお聞きしたいのですが、江戸切子の魅力、特に華硝さんの江戸切子の魅力・特徴はどんなところにあるのでしょうか?

私たち華硝が特にこだわっているのは、繊細なカットと透明感のある輝きです。繊細なカットという意味では、父が開発した「米つなぎ」など、華硝だけしかできないオリジナルの紋様があります。

透明感のある輝きは、薬品仕上げではなく、手作業での磨きにこだわっています。多くの工房や大量生産の現場では、効率を優先して化学薬品を使った仕上げがほとんどなのですが、華硝ではそれをすべて手作業で行っています。手作業で仕上げたガラスは、やはり輝きがまったく違いますね。

―手作業となると、非常に高い技術力が必要になりそうですが、どのようにして職人の方々を育てていらっしゃるのですか?

技術部門は、父と弟が担当しています。良質な江戸切子を継承していくには、技術力とデザイン力の両方が必要になると考えています。

技術力という意味では、やはり経験量がものを言いますね。新しく入職した職人には、定番商品を何度も何度も作って経験値を高めてもらっています。ちなみに、若い女性の職人が多いのも華硝の特徴です。

一方、デザイン力はセンスの部分が大きいと思いますが、これも経験させないと伸びていかないと思っています。最近では、若手職人に毎月1デザインの企画を課して、それを集めて企画展を開催するようになりました。

若手の企画展をメルマガなどで案内すると、オンライン上ですぐに売れていくこともあります。お客様の反応が直接わかるので、若い職人とっては、やりがいにも学びにもなると思います。お客様が、職人の成長を一緒に楽しんでくれるようになったら最高ですね。

ちなみに、江戸切子を本格的に生産できる工房は、都内に10ヶ所ほどしか無く、非常に小規模で後継ぎがいないという声をよく耳にします。日本橋店を出店したことで、今までよりも多くの方に発表する場ができたので、その意味では、しっかりと次世代を育てていく役割も担っていきたいです。

 

■直営店での販売にこだわる、ここだけでしか買えないというブランド

―それだけ技術と想いがこもった素晴らしい商品ですが、直営店に来店するか、直営のオンラインショップかでしか購入できないんですよね。ぜひ販売したいという方も多いんじゃないでしょうか?

父の代からの方針で、直営店だけでの販売にこだわってきました。職人の数もそれほど多くないので、数を作れないということも理由の一つでした。また、価格決定権を自分たちが持っていたいというのも理由ですね。これまでも百貨店などから多く引き合いがありましたけど、全てお断りしてきました。百貨店だと倍の値段になると聞いたりして、それは自分たちの提供したいものではないと思ったものです。

やはり、ローカルな意味での「ここでしか買えない」ということが魅力になっていくと信じています。これからも、自分たちが納得できる商品を、お客様と直接お話ししながら、対面で販売していきたいと思っています。

あとは、オンラインショップやSNSでの反応がとてもいいですね。最近は、Instagram経由で、「彼女があれを欲しいというの来店しましたが、販売していますか?」といった声を頂くことも増えてきました。

今考えているのは、せっかくSNSなどのネットの媒体をみて、リアルな店舗に来店して頂けるんだから、リアル店舗をもっとエンターテイメント性のある場所にしたいということです。来店者が良い意味でインスピレーションを刺激されるような、そんな店を作っていきたいです。

―江戸切子に限らず、他の企業の方々と多くのコラボ企画を実施されていますね。どんなスタンスで取り組んでいらっしゃるのですか?

日本の伝統を次代につなげていきたいという心ある企業の方々と、華硝の持つ江戸切子のデザインを使って、一緒にインスピレーションを共有したいと思っています。

だから、「華硝と一緒に企画しているということがわかれば、著作権も使用料もいりません」って。その代わりに、一緒にやりたいって思える方々としか組みませんけど。

日本橋には、様々な伝統企業も、伝統技術も残っているので、専門家・専門店だからできる発想にこだわりを持っていますね。初めてのコラボ商品は、手ぬぐいだったと思います。とても評判が良くて。今は、スカーフ、携帯ケース、飴、風呂敷、扇子、一筆箋、折り紙、壁紙まで、本当に様々ですね。

華硝ファンのお客様は、そのようなコラボ商品も楽しんでご購入頂いてますね。今は、モラルテックスさんとのタオルの他にも、熊のぬいぐるみとか、もう何でもありになってきました。どちらも試作品がとっても可愛いので、仕上がりが楽しみです。

 

■日本橋でのコラボレーション企画

―日本橋地域で活動されて2年。地域の皆様との交流やお客様に何か特徴はありますか?また、海外のお客様の反応はいかがですか?

日本橋地域は、大企業の本社や事務所が数多くあるので、平日来店される会社関係のギフト需要が多い印象です。一方、工房のある亀戸では、個人のお客様が中心で土日の来店数が多いので、正反対かもしれませんね。週に2〜3組は海外のお客様も来店されますよ。もっと海外のお客様にも広がっていくと嬉しいです。

―多くの方に江戸切子を知って頂きたいとのことで、切子スクールを運営されているとお聞きしました。

7年くらい前に、亀戸の工房で始まりました。最初の生徒さんは4名くらいで、職人の弟と私とでできる範囲からのスタートでした。数回の体験版で、自分だけのオリジナル切子を製作できるコースでした。

それが今では、200名以上の卒業生がいる大きなスクールに成長しました。内容も、入門編、初級編、中級編、上級編、インストラクター養成コース、職人養成コースなど、参加者の方々のご要望により様々なコースが生まれています。

今後は、このスクールを一つの事業の柱となるようにしていきたいと考えています。スクールのための場所を確保し、充実した指導を行える環境づくりにもチャレンジするつもりです。

ちなみに、モラルテックスさんのタオルを使わせて頂いてから、タオルのことを全然知らないことを自覚するようになりました。選び方、洗い方、干し方など、知らないことだらけです。鳥山さんも、ぜひタオルスクールやってください。

―当社のタオルを何度もご購入いただいています。本当にありがとうございます。私たちも、インスタグラムなどで、タオルの扱い方の情報発信をはじめたところです。今後も、色々と勉強させてください。

こだわって作られたもの、気持ちが入っているものを使わせて頂くと、生活や豊かになりますよね。でも、いまでもイマイチ選び方や扱いに迷うことが多くて。本当に柔軟剤は使ってはいけないのかとか、良い干し方とか、そんなことが学べるといいと思いますよ。ぜひ開講してください。

―勇気が湧いてきました!熊倉様は、教員のご経験があると伺いました。私も教員を経験しているので、お互いスクール運営はお手のモノですね。当社でも、スクール運営、ぜひ検討していきたいと思います。アドバイス、ありがとうございます。

 

■女性がもっと活躍できる職場を作りたい

―今、伝統工芸の承継をするにあたって多彩な活動をされていますが、その底知れない原動力は、どこからくるのでしょうか?とても興味があります。

私自身の体験を通じて、日本の職場環境は、まだまだ女性に不利な状況ということを強く感じています。例えば、私の教員時代も、女性という理由でなかなか正規採用をしてもらえなかった、という悔しいことも経験しました。

なので、今の華硝では、若い女性の採用を積極的に行っています。女性は、出産や育児などで仕事から離れざるを得ない時期もあります。でも、その分、仕事をやるときはやる、といったメリハリ・やる気はしっかりと持っている人が多いと思います。

経営する側となった今、女性がもっと活躍できる職場環境を作りたいと考えています。出産や育児を企業が支援するような仕組みを作りたいですね。

正直言って、経営者って大変ですよね。日本橋店を出店するときも、たくさん迷いましたし。これまで雇われる側も経験があるので、「何でこんなに苦労しなければいけないんだろう、身の丈でいいんじゃないか」って思うこともあるんですよ、これでも。

でも、そんなときは、「経営者として、もっと女性が働きやすくい職場を、女性のための雇用を生み出せるようになりたい」というのが私の使命だよ、っていうスタートラインに立ち返るようにしています。そうしたら、またやる気が出てきます。

―すごいバイタリティですね。今お考えになっている次の展開は、どんなものがあるのですか?

例えば、江戸切子バーなんて、できたら面白いんじゃないかって思っています。こだわりのグラスで飲む、至極の一杯。華硝のグラスを使うことがステータスだと思っていただける空間、そんなエンターテイメントで刺激的な空間を演出できたら面白いなと思っています。日本文化をクリエイティブに伝えていく活動を続けていけたら幸せですね。

ー長時間のインタビューにご協力頂き、ありがとうございました。もうすぐになりますが、10月19日、20日のべったら市でご一緒するのが楽しみです。引き続き、よろしくお願いいたします。今日は、本当にありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

 

***

今回インタビューした、江戸切子の店華硝さんのウェブサイトは、下記の通り。べったら市の出店レポも後日掲載予定です。お楽しみに!!

■江戸切子の店華硝 https://www.edokiriko.co.jp

日本橋店 https://www.edokiriko.co.jp/project/nihonbashi/

(取材・執筆)

モラルテックス代表 鳥山貴弘

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA